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台湾の残留農薬基準に対応した
いちごの栽培に取り組むグループ
日本国内で流通している日本産いちごは、国内消費を目的に生産されているため、台湾の残留農薬基準に適合していないものが多くを占めています。
このため、台湾にいちごを輸出(輸入)する場合には、①台湾の残留農薬基準に対応して栽培されているものであることの確認、やむを得ず日本国内で流通しているものから調達する場合には、②輸出前に農薬の使用履歴を確認し台湾の残留農薬基準に対応して栽培されたものであることの確認、③輸出前に残留農薬分析を行い台湾の残留農薬基準に適合しているものであることの確認、をする必要があります。
私たちは、台湾の方々に日本産いちごを安心して美味しく食べていただくためにこのグループを立ち上げ、台湾向けに生産を行っている産地等の情報を発信しております。
本グループでは、日本と異なる台湾の残留農薬基準に対応するため、産地において防除方法の見直しや使用する農薬の検討を行うとともに、農薬の使用履歴の確認や出荷前の残留農薬検査等による残留農薬基準値超過の防止措置を行っています。
また、万が一、残留農薬基準値の超過が起こってしまった場合には、その要因を解明したうえで改善措置を講じています。
これらにより、台湾の残留農薬基準に対応したいちごをお届けするよう努めています。
(参考資料)
台湾の残留農薬基準値に対応した生果実( いちご)の病害虫防除マニュアル・改訂版を作成しました。改訂版では、残留農薬基準値の超過事例が問題となっている台湾を対象として、日本と台湾における残留農薬基準値の相違を調査し、具体的な情報を掲載しています。
●台湾の残留農薬基準値に対応した生果実(いちご)の病害虫防除マニュアル・改訂版
熊本県いちご輸出生産者会
【熊本県いちご輸出生産者会の取り組み】
「熊本県いちご輸出生産者会」では、輸出に意欲的な熊本県内の生産者30戸以上が所属しています。その中の一部生産者が台湾の残留農薬基準に対応した栽培プログラムを構築し、同国への輸出に向けて生産・出荷をしています。
また、台湾向けのいちごの栽培プログラムは今後、他の所属生産者にも共有することで、輸出拡大を目指しています。
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(1)体制について 提携する農業資材メーカーがハウスを定期的に巡回し、病害虫の発生や生育状況を確認しています。本巡回時に、状況に応じて、防除方法の助言を行っています。また、その防除による結果やノウハウは、他の台湾向けに栽培している生産者にも共有しています。
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(2)栽培方法について 天敵や物理的防除の活用など化学農薬に依存しない病害虫管理により栽培しています。
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(3)収穫をしてから流通までについて 生産者の農薬使用履歴の確認を行い、残留農薬基準値を超過しているおそれのあるいちごは、必ず出荷前に残留農薬検査を行い、台湾の残留農薬基準に適合していることを確認してから出荷しています。
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(4)残留農薬基準値の超過事例発生時の対応 万が一、残留農薬基準値の超過事例が発生した場合には、その要因解明をしたうえで改善措置を講じています。
輸出事業者A
【輸出事業者Aの取り組み】
台湾の残留農薬基準に対応して栽培された後、JAの集出荷場に持ち込まれたいちごについて、市場を通さず直接仕入れ、福岡空港から台湾へ空輸しています。このため鮮度も抜群ないちごをお届けすることが可能となっています。また、国や県の情報提供はもとより事業を最大限活用し、産地の拡大に努めています。
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(1)社内体制について 台湾向けいちごについては、社内における担当者を決め、出荷予定数量や栽培状などについて、常にJA担当者との情報を共有を行っています。
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(2)集荷から空港までの流通について 生産者の農薬使用履歴の確認を行い、残留農薬基準値を超過するおそれのあるいちごは、台湾向けとして出荷しないようJA担当者と情報共有を行っています。
集荷については、横持ち業者に集荷場から空港までの配達を依頼したり、場合によっては弊社社員が直接JA集荷場で引き取り、福岡空港まで運ぶ場合もあります。
産地から市場を通さず直接空輸することで、集荷から現地店舗に到着する時間が短縮され、非常に鮮度の高いいちごを提供することが可能となっています。 -
(3)残留農薬基準値の超過事例発生時の対応 万が一、残留農薬基準値の超過事例が発生した場合には、まずは台湾インポーターと情報共有を行うとともに、その要因解明をしたうえで改善措置の徹底を図って参ります。
産地A
【産地Aの取り組み】
生産者7戸が台湾の残留農薬基準に対応した栽培をした上で出荷しています。
また、国や県の関連施策、予算事業を活用し、台湾に輸出するための栽培体制づくりに取り組んできました。
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(1)指導体制について JAと普及指導センターで定期的にほ場巡回を行い、病害虫の発生状況や生育状況に応じた指導を行っています。また、講習会等の座学も定期的に行い、病害虫や農薬について理解を深めています。
巡回の様子 -
(2)栽培方法について 天敵や物理的防除の活用など化学農薬に依存しない病害虫管理により栽培しています。 また、生産者に対して、病害虫の発生状況や生育状況に応じた防除方法の助言を行っています。
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(3)収穫してから流通までについて 生産者の農薬使用履歴の確認を行い、残留農薬基準値を超過したおそれのあるいちごは、台湾向け輸出用に出荷しないよう徹底しています。
また、検査員によるチェックを入念に行い、異物混入対策を行っています。疑わしい場合など必要に応じ、出荷前に残留農薬検査を行い、台湾の残留農薬基準に適合していることを十分に確認した上で出荷しています。トレーサビリティに対応したパッケージ -
(4)残留農薬基準値の超過事例発生時の対応 万が一、残留農薬基準値の超過事例が発生した場合には、その要因解明を行い改善措置を講じています。
株式会社うるう農園
【株式会社うるう農園の取り組み】
私たちのいちごはすべて、特別栽培(化学農薬・化学肥料5割以下)にて育てています。
あまおうの認証が0.1%以下の有機栽培の取り組みも始めております。
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(1)体制について 現在、うるう農園は福岡県の特別栽培(化学農薬・化学肥料を県基準の5割以下)の認定を受けているが、台湾の農薬規制は県基準の2割程度しか使用できず、さらに残留成分の0.01ppmも検出が許されない不検出の農薬ものも多数あり、いちごが花をつけた後11月~2月までは化学農薬を不使用にする必要がある。
これを実現するために、人手をかけた徹底的ないちごの見回り管理と、害虫の天敵をハウス内に放ち防除する生物農薬を利用するなど、手間とコストを多大に投下しています。 -
(2)栽培方法について ・いちごの登録農薬のうち、台湾の残留農薬基準値との関係から輸出用防除体系に使用可能な農薬を選定。
・育苗期は国内の使用基準に沿って農薬を使用できる。ただし、ナミハダニ対策では天敵カブリダニを利用し、本天敵に影響しない農薬を使用する。
・開花以降は、うどんこ病には紫外線UV-B照射、ハダニ類には天敵カブリダニを利用し、その他の病害虫に対しては、天敵に影響が少なく、かつ残留農薬基準値が日本と同等以上の農薬を使用する。
・夏場の苗見回りを7万株毎日欠かさず行い、病害が疑われる株は周り20株を廃棄する。 -
(3)収穫してから流通までについて 海外向けにも、国内と同様の作業品質で選果・梱包・発送までを自社で行っております。生産現場から直送するので、輸出でも店舗に並ぶまでのリードタイムを最小にすることができます。
なお、必ず出荷前に残留農薬検査を行い、台湾の残留農薬基準に適合していることを確認してから出荷しています。 -
(4)残留農薬基準値の超過事例発生時の対応 万が一、残留農薬基準値の超過事例が発生した場合には、その要因解明をしたうえで改善措置を講じています。
全国農業協同組合連合会 宮城県本部
【台湾向けいちごの取り組み】
JAみやぎ亘理いちご部会との連携により生産者9名が、台湾の残留農薬基準に対応した栽培を行い、出荷に取り組んでおります。
また、台湾の残留農薬基準に対応したいちご栽培に取り組むグループの協議会に参加し、課題解決に向け、関係機関の技術支援をいただき、生産者や輸出事業者等との打ち合わせを進めながら取り組んでいます。
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(1)体制について 県の指導のもと作成した防除暦により栽培し、また、発生した新たな課題は、県普及センター等の支援のもと解決に取り組んでおります。
残農検査については、全農残留農薬検査室、販売については、全農インターナショナルの協力体制のもと進めております。 -
(2)栽培方法について 台湾の基準に即した栽培への取り組みとして、天敵の活用など化学農薬に依存しない病害虫管理に向け、検討を行いながら栽培を実施しております。発生した課題は都度協議を行い解決に努めております。
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(3)収穫をしてから流通までについて 流通は、仙台空港からの直行便を活用することで、陸送時間を削減し、品質の安定化及び、輸送時の痛み事故発生の削減に努めております。また、包装容器をT11型パレットサイズに合わせることで輸送の効率にも取り組んでおります。
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(4)残留農薬基準値の超過事例発生時の対応 生産者の農薬使用履歴の確認を行い、残留農薬基準の超過のおそれがあるいちごは、台湾向け輸出用に出荷しない。また、出荷用のいちごについては、出荷前に残留農薬検査を行い、台湾の残留農薬基準に適合していることを確認し、出荷しています。農薬を使用した場合は、自己申告をいただき、検査後基準値を超過した場合は出荷停止としております。